令和元年度 宅建士試験 民法雑感2

おはようございます。昨日に引き続いて令和元年度の宅建士試験の民法について雑感です。


第5問

無権代理は出題予想しておりましたが、判決文問題で出題されるとまでは考えてませんでした。ただ判決文問題ではあるが、判決文を読まなくても解けるような問題でした。

設問4は本人相続型です。過去問でも出題されていますし、講義を受講された方には無権代理と相続についての4パターンを詳しく説明しておりますので、比較的とっつきやすかったかもしれません。

設問1は追認拒絶した後、もう一度追認できるかという問題ですが、ここは知らなくても判決文を読み返せば判断できたかと思います。

設問3は遡って有効となりますが、こういう効果が発生する時期などは少しおろそかになる方が多いようなので、ここ間違われた方は要注意です。

設問2は、無権代理人相続パターンです。前半は本人拒絶で代理行為が無効確定してますが、後半は責任を問われますよね。

今回は判決文問題なので判決文をよく読めば正解を導け出せたと思います。ですが、設問に引きづられて、例えば設問3の後半の但し書きで迷われた受講生がいらっしゃったかも知れません。もし知識として欠けていれば押さえる必要ありますが、問題を解く、正解を導くという意味では判決文をよく読むのが重要だった気がします。


第6問

遺産分割の問題です。「預貯金債権」というキーワードが目についたので設問3から検討しました。少し前に預貯金債権も分割の対象になりましたので、押さえていた受験生は多かったのではと思います。

設問1は、遺言で禁止することができるので、ここまで読んで「×」と判断をしましたが、まだ正解肢にたどり着けない。

設問2は遺産分割協議の合意解除の問題です。合意解除はできるが法定解除はできないという有名どころなので容易に判断できたかと思います。


第7問

準占有者に対する弁済です。過去問でもそれほど出題されておらず、ここはノーマークの受験生が多かったかも知れません。

設問2と3について、受領権限がない者に弁済するとき、弁済者が善意無過失だったら有効になります。

設問4は同時履行の抗弁権の話ですが、この分野を切り出して比較検討していた受験生は判断できたと思います。

設問1は最終的に弁済されているということに気づけばなんとか判断できたかなとは思いますが、判断できなくても仕方がないかも知れません。


第8問

請負契約です。建物の場合は「解除できない」というのが何度も問われていますね。

設問4から検討しました。これは請負契約の基本なので判断できたと思います。次に短い設問は設問2。年数が出ている問題は出来れば避けたいので、設問3を検討しました。注文者のせいということなので正誤判断はできます。

設問1。解除は出来ないという知識は知っていたとしても、立替費用相当額の損賠は知らなかった受験生は多かったかも知れません。これを知らないと設問2に戦いを挑むしかなくなるのですね。

民法を勉強したが、点数を取れないという受験生はたぶん但し書きとか例外、平行してできることなどを押さえきれていないような気がします。


第9問

時効中断です。請求棄却とか取り下げでは中断しない。この問題は簡単でした。もし分からなかった受験生の方がいらっしゃったとすれば、「棄却」とか「却下」というのが具体的になんなのかを試験中に考え始め、深みに落ち込んだんだと思います。


第10問

抵当権の処分です。抵当権からは抵当権と根抵当権の比較、物上代位、抵当権の処分を予想しました。このうち順位の譲渡の計算問題が出題された形です。講義では何度か抵当権の処分について説明させていただきましたが、きちんと押さえていた受験生はこの問題は取れたと思います。

民法10問のうち大体4問くらいは取れて、肢を一つずつ検討して正解に導けくことができたのが2,3問あるという感じでしょうか。

令和元年度 宅建士試験 民法雑感

おはようございます。今日は雨ですね。令和元年度の宅建士の問題が手に入ったので民法部分を解いてみました。


第1問

物権変動が最初の問題ですが、問題冒頭の2行を読んだとしても物権変動の問題とは推測できません。ざっと見て、短そうな肢から検討していくことになります。設問1か設問3ですが、僕は設問3から検討しました。

設問3は前主後主の問題であり、「○」。どうも第1問は「物権変動と対抗要件」に関する問題のようです。

次に設問1を検討しました。不法占有ということでこれが正解肢です。受講生の方にお渡ししていた「177条の第三者」の表を繰り返し確認されていた方には平易だったと思います。

検討はしませんでしたが、設問2については「177条の第三者」、設問4は「取得時効と登記」ですね。「取得時効と登記」は難易度が高いので、できれば検討は避けたいところです。

設問4は文章も長いので、検討してしまった方は他で判断できなかったからだと思われますが、「177条の第三者」をきちっと押さえることが優先度が高いと思います。


第2問

この問題は冒頭を読んだだけでは物権変動の問題かなと思いましたが、意思表示の問題でした。さっと全文を眺めるとどうも「錯誤」についての問題です。え?マジですかって感じ。なんでこの期に及んで「錯誤」を出題する!受講生の方には「錯誤」は出ない。出るとしても「錯誤取消しの引っかけくらいかな」と思うと散々言ってきたので、申し訳ないです。

僕は一番短い設問4から検討しました。「重大な過失があれば無効主張できません」ということなので、一発で正解判断できました。受講生の方もこれくらいは判断できたのではないでしょうか。

検討はしませんでしたが、設問1と2は「177条の第三者」の問題で、これは受講生にお配りした表に載せていたので判断はできたと思います。因みに設問2は悪意の第三者です。

設問3は「錯誤」でどこまで主張できるかの問題で、ちょっと難しかったかも知れませんが、ここを検討してしまった方は「錯誤」の基本ができていなかったのではないでしょうか。


第3問

瑕疵担保の問題ですね。売買の担保責任と一緒に「減額請求」、「解除」、「損害賠償」のキーワードを押さえておく必要があります。

設問3から検討しました。損賠と解除の並列が可能かどうかを問われています。すぐに「×」と判断できましたが、もしかしたら迷われた受講生がいらっしゃったかも知れません。

設問4は、媒介者である宅建業者が登場します。これを読んで「イヤやなぁ」っていう気持ちが芽生えます。民法だけで設問を検討したいのに、なんか業者が搦むと例外があったよなっていうのが脳裏を掠めるからです。ということで飛ばしました。

設問2は、「目的を達成できるか否かにかかわらず」まで読んだ時点で判断できました。ここで判断できなかった方はもう一度テキストを読み返すようにしてください。

設問1。ほぼ全肢検討になってきていますが仕方がないです。責任追及の期間は知ってから1年ですよね。

一応予想範囲ではありましたが少し論点をずらされており、ズバリ予想が当たったとは言えないかも知れません。受講生の方もなんとか答えは出せたんじゃないでしょうか。


第4問

不法行為は出題予想しておりましたが、ちょっと毛色が違っていました。設問3から検討しました。「教唆」なんてキーワードがでていて刑法の問題かと思いました。まぁ「×」やろなと思いましたが、さらっと流しました。未知の領域なので判断するのはとても危険です。

設問4。「名誉毀損」とは・・・。何これ、刑法ですかって感じです。「○」かなって思いましたが、さらっと流しました。ここも未知の領域です。

設問2は、債務不履行と不法行為の比較でよく問われる論点で、不法行為の場合は過失相殺は任意的で免除不可というのがあります。それのことをきいているのかなって思ったのですが、どうも違う。設問1も設問2も当事者が違うっぽいが、このあたりは未知の領域なので判断しようがない。「任意的」ということなので、どちらも「×」っぽいが・・・。

ということで消極的に設問4を選びましたが、この問題は解けなくても仕方ないかも知れません。

後半は追って記載します。

令和元年度 宅建士試験を予想してみる3

おはようございます。司法書士試験のことばかり書いていて、宅建士の試験について書く時間がありませんでした。後10日です。私が受験生の頃はこのブログの前の方にも書いてありますが、ちょうど過去問4週目終了した時期です。頑張っていきましょう。

民法の予想論点の続きです。


売買の担保責任

これ、一部他人物とか抵当権付きとかの条件、善意とか悪意とかの主観要素など結構大きめの表が出てきますよね。あの表は絶対に覚えなければなりません。適当になんとかなるって思っている受験生もいらっしゃるかも知れませんが、なんともなりません。

覚えるのは絶対やらねばならいとして、どうやって覚えるのか。それが問題です。まぁ端的に言うと暗記するしかないんですが、漫然と表を眺めているだけでは無理です。

こういうとき表は出来るだけ単純化するように、また例外の方を覚えるようにしてください。解除、損害賠償、減額の3項目は空で思い出せるように。そして「善意」の方は確実にする。次に「悪意」の方にチェックが入る例外が4つありますが、この4という数字とともに例外の場所を覚えることです。

目標は20秒くらいで簡単な表が空で書けることですね。毎日朝晩数分やれば出来るようになりますので頑張ってください。そして試験が開始したら民法をさらっとチェックし、出題されているようであれば記憶が鮮明なうちに余白にこの表を書き込むこと。

この表を覚えれば大体の設問は解けると思いますが、次の問題は「権利の瑕疵」と「物の瑕疵」の違いです。土地なら所有権しかありませんが、建物の場合は「物の瑕疵」を問われることが多い気がします。「物の瑕疵」の場合は「善意・無過失」ですから注意が必要ですね。

もう一つ、「法律の瑕疵」は「物の瑕疵」として判断することになってますから覚えておいてください。「法律の瑕疵」ってなに?って思われるかも知れませんが、なんらかの法律があって建物が建てれませんでしたとかいう問題ですね。


連帯債務

この多数当事者ってのは難しいですね。6つの絶対効を覚えてください。請求・更改・混同(相続)・相殺・免除・時効です。

特に債権者側からの絶対効は請求のみであり、これホントによく問われています。もしこの分野が出れば、確実に出題されると思います。そして後半3つがくせ者です。負担部分という考え方が入ってくるからなんです。負担部分というのは債務者側内部の話であり、債権者からはまったく見えない部分なんですね。

このあたりを本格的に覚えるには時間的に余裕がないので、相殺・免除・時効は負担部分があるということは覚えてください。というのは連帯債務と連帯保証の比較問題が出題される可能性があるからです。

連帯保証はあくまでも保証であり、債務者ではありません。ここが連帯債務との違いです。連帯債務の場合は債務者だから負担部分ってのがでてきますが、保証人は債務者じゃないので負担部分はゼロです。従って「保証人に対して」の相殺などは相対効となります。主債務者へ影響しない。

ここ保証人に対してですから、注意してください。主債務者に対してだったら話が違ってきますので、連帯保証が出れば、誰に対してのアクションなのかをよく読み取るようにしてください。


さらっと書きましたが、もはや超直前期なので、民法はさらっと表を確認するくらいにとどめておく方がいいと思います。

建築基準法とか都市計画法とかは業界の方は結構詳しいと思うので、こちらも表をさらっと眺めるくらいでしょうか。宅建業法は過去問を見直しして過去問で出題された問題は確実にすることを目指してください。

令和元年度 宅建士試験を予想してみる2

こんにちは。今日は涼しいですね。小雨が気になりますけど。

さて、昨日の続きです。


物権変動と対抗要件

ここの分野は大きく分けて「○○と登記」と「177条の第三者」があります。前者は、さらに細かく分けることができます。「取消しと登記」、「解除と登記」などですが、特に「相続関係と登記」と「時効と登記」が難しいかなと思います。

宅建士の試験ではまんべんなく出題されるので、細かく分野を絞るのは得策ではないと思います。この「○○と登記」では、まず設問の中に「○○後の第三者」がないかどうかを探すのが得策です。「○○後の第三者」は登記の早い者勝ちなので、正誤判断が簡単です。

相続関係の登記は改正ポイントとなっており、今年は出題されにくいかもしれませんので、「時効と登記」の過去問を押さえておくとよいかもしれません。ここでは抵当権がどうなるのかということも併せて押さえておきたいところですが、時効をどのタイミングで援用するのかによって抵当権が消えないというケースもありますので、深追いは避けた方がいいかもしれません。

177条の第三者については4肢中2肢くらい出題があるかもしれません。宅建士の試験では、高く売りつける目的の「背信的悪意者」が結構好きですよね。またオーナーチェンジ後に、賃借人へ家賃を請求するお話も好きそうです。


抵当権

これは絶対に出題されると思いますし、そろそろ根抵当権の当たり年かもしれません。抵当権についてですが、法定地上権は直近出題されており今年はお休みかもしれません。

じゃあ何が出るのかですが、物上代位と抵当権の処分は押さえておく必要があります。これら単体で出題されるかもしれませんが、抵当権の広い範囲の中から1肢としても考えられます。

物上代位についていうと、差し押さえが必要だということと、ほぼ例外なく物上代位できるということです。宅建士の試験では火災保険請求権と賃料債権が好きですよね。

これらの請求権を差し押さえて物上代位するというのが基本ですが、すでにお金が支払われてしまったとかいうケースに注意が必要です。支払われてしまうとそもそも差し押さえできませんからね。

また過去問で出かかっている転貸賃料債権への物上代位は例外を押さえておくとよいかもしれません。「同視しうる」という文言がキーワードです。たぶんこのまま出題されるでしょうから、本試験の現場で見つければラッキーという感じでしょうか。

根抵当権については、根抵当権のみというよりも抵当権との比較が出題される可能性が高いと思われます。

随伴性の有無や後順位の抵当権への影響などを押さえるのですが、抵当権の成り立ち、根抵当権の成り立ちから軽くおさらいしておくと理解が深まると思います。

元本確定については、設定者からの請求が過去出題されておりますので、その反対として根抵当権者からの請求は問われるのではないかと予想します。ここは確定期日の有無を交えて聞かれるかもしれません。その他の確定事由は問われないと思いますし、もし問われたら捨て問でしょうね。

令和元年度 宅建士試験を予想してみる

こんにちは。宅建士の試験が近づいてきました。後2週間ですね。民法の出題予想について書いてみようかなって思います。

宅建の民法講師をしているときに折を見てお話ししていることなので、重複する内容があるかもしれませんが、それはご了承ください。

またあくまでも個人的見解なので、実際に出題されるかどうかはわかりません。ですが、時間に余裕がない方はどうしても優先度が高い(と判断される)ものから潰していった方がよいと思いますので参考にしてみてください。

  1. 意思表示のうち虚偽表示
  2. 代理
  3. 物権変動と対抗要件
  4. 抵当権
  5. 売買の担保責任
  6. 連帯債務
  7. 不法行為
  8. 相続

意思表示

まず意思表示ですが、大きな論点として錯誤と虚偽表示がありますが、錯誤は改正があるため敢えて出題する意図がわかりません。出題はされないのではないかと予想します。虚偽表示は平成24年、27年と出題されており、30年は出題されていませんので今年は出題されるのではないかと思います。

どういう設問になるのかはわかりませんが、94条2項の第三者にあたるのかあたらないのかという問題は必ず出るとおもいます。特に一般債権者が好きなようで、四肢の一つに出題があるのではないでしょうか。

また該当・非該当の判断だけではなく、設問によっては該当するとどうなるのかということまで聞かることもあるようです。虚偽表示は原則「無効」ですが、該当する第三者が出現したときに保護する規定だということを念頭に置くとよいのではないでしょうか。

特に平成27-2-2は昭和57年判例からの出題で結構難しいですが、他の設問で答えを導き出せることは可能です。またこれと似たような昭和38年判例があるので、時間に余裕があればそちらも押さえておくとよいかもしれません。この2つはセットなのでどちらかが出ればもう一方も出題されると思います。


代理

代理の分野は復代理と無権代理が大きなウェイトを占めています。ところで平成30年の「相続」に関する問題ですが、所謂「相続」とは全く違う論点の寄せ集めです。この中に無権代理の相続が含まれていました。

こういうこともあって今回は真正面からの無権代理に関する問題ではないかと予想してみました。無権代理に関する問題としては、相手方保護、本人保護が設問単位で頻出していますので、催告、取消し、責任追及の要件を再チェックしてください。

催告については、制限行為能力者の保護者に対する催告とも比較して押さえておくとよいかと思います。

また無権代理の相続という割と大きな論点があります。全部で4パターンありますが、無権代理人死亡、その後に本人死亡するという未出パターンがあります。気の毒なお母さんの問題ですね。これ一見登場人物が多くてややこしそうだけど、割と簡単に答えを導き出せるので余裕があれば押さえておくとよいかもしれません。

宅建士 民法過去問解説講義

こんばんは。猛暑が続いています。日中に宅建士の講義で出かけることが多いのですが、ホントに参ってしまいます。

宅建士の本試験まであと2ヶ月程度となってきました。この時期は直前期なので本来は答練や模試を受けて力試しをし、論点で抜けているところを補足カバーするところですが、兼業受験生の方の様子をうかがっていると、なかなか時間を作ることが難しいのもあって、民法は後回しになっているように思えます。

なかでも抵当権がよく分からないというご意見が多いようです。こちらとしても出来るだけ噛み砕いて説明しているつもりですが、それでも理解が及ばないようなんですね。

確かに抵当権は論点の範囲が広いので、論点全部を読み返したり過去問を解いたりするのは時間的に大変ですが、特に何をきかれているのか理解できないということはありません。ゆっくりと説明したら理解できると考えていたのですが、そうもいかない・・・。

宅建士の試験では民法が10問しか出題されないので、どうしてもテキストが手薄になってしまいます。これも理解が及ばない原因なんでしょうね。理解が及ばなくても本試験で点数が取れれば問題ないのですが、最近は薄く広く出題される傾向があるので、やっていないと手も足も出ないってことになります。

どこの部分で詰まっているのかを一人ずつ聞き出してみました。確認の方法としては過去問を1行ずつ読み進め、理解度をチェックしていくというやり方になります。

抵当権は被担保債権を担保するために、不動産などに設定されている担保物権です。この「被担保債権」という単語と「設定」及び「物権」の意味が曖昧というケースが目立ちます。

銀行から住宅ローンで1000万円借りたとします。この1000万円が被担保債権であり、銀行はこれが返済されなかったときの保険として不動産に抵当権をつけるということになります。ここにある抵当権の設定登記は、「対抗要件」であるということは結構重要な論点ですよね。

抵当権と根抵当権の違いも過去問では2回ほど出題されていますが、根抵当権は説明がやっかいです。試験委員は本気で問いたいのか、或いは受験生に満点を取らせない枠として出題しているのか、そこが今ひとつ分かりませんが、問われている論点が基本的なところにあるような気がするので、前者のように思えます。

本気で問いたいとすれば、今年は当たり年なので、確実に押さえておきたいなと考えて説明するのですが、さわり部分しか説明する時間がないのでなんとも中途半端感が拭えません。

ということで自ずと出題されるであろう範囲に絞ることになるわけです。例えば元本の確定については設定者側からの請求が過去問で問われておりますので、次回は根抵当権者からの請求が問われるのではないかというふうに予想するわけです。

講義を受講されている方にはこういうテキストに載っていないが、過去問に近い論点はできるだけ押さえて貰うように時間を割いております。これだと興味もなかなか湧きませんが仕方がないと割り切るしかありませんよね。

宅建士の出題予想(抵当権)

おはようございます。約1ヶ月ぶりの更新です。

昨日は東京で夏日になったようで、すっかり夏突入の感じです。日中の時間が長くなるのはとても嬉しいのですが、日差しがきつくなるのは厳しいですね。外出するときにギラッとしたアスファルトの照り返しを見るとそれだけで気分が萎えてしまいます。

さて、前回宅建の講師を始めたと書きました。関東近辺を出張しながら権利関係(主に民法部分)の講義をしております。

宅建の民法は幅広い分野から満遍なく出題されており、出題数もある程度はあるのですが、いかんせん広すぎる出題範囲に対して出題数が少ないんですね。そういうことが理由の一つだと思われるのですが、前回も書きましたように宅建業法などに比べてテキストが薄いように感じます。

過去問を解いてみると、民法をしっかりと学習してきたものにとっては、正誤判断できるできないは別問題として、まったく未知の問題というものはなさそうです。ですが、テキストを読み込んだとして解けるのかというと、やはりテキストには必要最低限の記載しかないため難しいかも知れません。

テキストには過去問で出題されたところは記載されていますが、それ以上に膨らませては書かれていない箇所が多いようなんですね。

例えば、抵当権の物上代位。火災保険請求権や賃料債権へ物上代位できるかというのは過去問で何度も問われているため記述はあります。ですが、それ以外の事例は書かれていなかったりします。

かつて物上代位だけで出題された設問がありましたが、テキストの物上代位の箇所の知識だけでは肢を全部切ることはできません。抵当権者対一般債権者の論点、賃料債権物上代位と抵当権実行の併存的な論点は解けないと思います。

根抵当権の元本確定。こちらも確定事由はいくつかありますが、テキストに記載されているのは、設定者からの確定請求のみ。これだとそれ以外の事由は自分で調べるかしないとまったく知識が入りません。出題されても解答不能です。

このようなよく出題される論点であれば、テキストではもう少し膨らませてもいいのではないかと思うわけで、この部分を講義では説明するようにしています。

令和元年度の宅建士の試験においても抵当権は出題されると思います。そして抵当権の中では、法定地上権が昨年(平成30年度)出題されているので出題確率は低く、物上代位と抵当権の処分、根抵当権が当たり年のように思います。

だいたい上記に絞って講義するようにしていますが、出題間隔的には抵当権の侵害、代価弁済と消滅請求、引き渡し猶予が危ないようにも思えます。時間があればこのあたりも講義に取り入れたいなって思います。

<民泊事業>政府と認識ギャップ、自治体が条例制定

おはようございます。3月になりました。早いものですね。ところで6月15日から施行される民泊新法(住宅宿泊事業)についての記事がありましたので引用しておきます。

(2018年3月1日付け毎日新聞から引用)

空き室に旅行者らを有料で泊める民泊の6月全国解禁を前に、民泊事業を所管する自治体のうち、区域や期間を制限する条例を制定、または制定を予定するところが4割を超えている。住環境悪化防止などが目的だが、政府は民泊促進の規制緩和を阻害すると警戒。自治体との認識のギャップが露呈している。

民泊は旅館業法で原則禁止されているが、住宅宿泊事業法(民泊新法)が昨年、成立。6月から家主が自治体に届け出れば年間180泊まで民泊事業を営めるようにする。

だが先月公表された政府の資料によると、都道府県や政令市、中核市、東京特別区など全国144自治体が民泊の所管権限を持ち、都道府県に権限を委ねるところを除く102自治体が実際に事務を担う見込み。このうち44自治体が区域や期間を条例で制限する意向で、残りのうち33自治体は制限せず、25自治体は模様眺めという。

44自治体のうち京都市は昨年12月以降に条例案作りで市民の意見を募った際、民泊について「無許可営業が横行し、平穏な市民生活を脅かす状況が発生している」と負の側面を明示し、住居専用地域での営業を1月15日~3月15日の2カ月間に限る条例を制定。東京都新宿区も平日の民泊営業を事実上禁じる条例を制定した。

危機感を強める観光庁は昨年末、全区域で年間を通し一律に民泊を制限する条例は「新法の目的を逸脱する」と自治体に注意を喚起。担当者は「法の趣旨を粘り強く説明したい」と話す。

◇区域や期間を制限する条例を制定または制定予定の自治体(※は住居専用地域での民泊事業を全期間で禁止する自治体)

北海道▽札幌市▽岩手県▽仙台市▽福島県▽群馬県▽東京都新宿区▽練馬区▽目黒区▽文京区▽千代田区▽中野区▽江東区▽荒川区▽港区▽中央区▽台東区▽※大田区▽杉並区▽世田谷区▽足立区▽板橋区▽渋谷区▽品川区▽横浜市▽静岡県▽長野県▽新潟県▽金沢市▽名古屋市▽三重県▽滋賀県▽奈良県▽奈良市▽堺市▽京都府▽京都市▽※兵庫県▽※神戸市▽兵庫県西宮市▽※尼崎市▽姫路市▽岡山県倉敷市▽沖縄県

(引用ここまで)

先日も新宿区の行政書士向けの講習会に参加してきましたが、担当部署の方は否定的なニュアンスでお話しされていました。

まぁ確かに朝晩ガラガラを荷物を引きながら移動したり、大声で話しているとちょっと迷惑なのを感じます。路上で喫煙するのもどうかと思いますし。こういった利用者側に負の側面があることが問題なんでしょうね。

ところで、登録をお願いされているお客様がいらっしゃいますので該当する自治体での調査をしているのですが、なかなか情報が出てこないようです。

6月に間に合えばいいのですが、一応3月15日から取り扱うとうたったいるので早めに情報を出してほしいところです。東京都、埼玉県、千葉県のガイドラインを比較してみましたが、東京都(といっても23区とかは除く)が一番厳しそうです。

未登記の建物について

こんにちは。宅建士の試験目前ですね。早く終わって欲しい気持ちでいっぱいです。後3日です。

さて、先日、未登記の不動産(建物)を底地の所有者へ売却したいというお話しがありまして、お客様の所へお伺いしてきました。ここで宅建士を受験される方ならいくつか疑問が湧くと思います。

まず、固定資産税はどうなるのか?です。不動産が所在している市町村に対して普通徴収されるんですよね。これは良いとして課税標準はどうなっているのか?登記していなくても課税台帳って存在するのかという疑問が湧いてきます。

結論から言うと未登記(法務局管轄)でも、課税台帳(東京都)は存在しています。分譲マンションなどを購入されている方はご存じだと思いますが、毎年税金の計算表が送られてきますよね。あの表に「未登記」と書かれていますが、キチンと課税標準は記載されているんですね。始めて見ました。

実は訪問する前に、未登記と言っても表題部の登記はあるだろうと勝手に考えていたんですね。というのも、建物を建築すると1ヶ月以内に登記申請しなければならないとされているからです。それがなかったわけですね。古くからの建物ということもありますが、現実は教科書通りにはいきません。因みに表題部の登録免許税は無料です。土地家屋調査士の先生に依頼することが多いかも知れませんが、その場合は別途費用が発生します。それにしてもここでも縦割り行政が垣間見えます。

さらに問題なのは登記がないことによる対抗問題の不備です。宅建士で過去に出題されたように、判例では表題部登記でもOKとしているのですが、それがないんですね。すぐに登記しないと第3者に対抗できなくなってしまいます。こういうケースは結構あるのかもしれませんね。試験問題からみですが、この登記名義人は借地権者と同名義でないとダメだと判例は言っていますのでご注意ください。

遺言の立会い(民法969条)

おはようございます。最近すっかり温かくなってきました。ただ残念なことに4月になってからは雨が続いており、桜が早々と散ってしまいそうです。

ところで最近、公証役場での遺言立会の仕事が割にあります。この立会というのは、公正証書遺言の証人のことで、2人以上の立会いが必要です(民法969条)。

公正証書遺言

  • 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない
  1. 証人二人以上の立会いがあること
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
  3. 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること
  4. 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる
  5. 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと

ここで口述をするとなっておりますが、実際のところ下書きを予め公証役場に送っておき、立会いの現場では原本及び謄本は作成されております。公証人はこの原本に基づいて口頭で述べ、遺言者と証人2人、さらに公証人が署名捺印をします。


 

この公正証書の証人には欠格事由があり、よく試験問題に出ます。

証人及び立会人の欠格事由(民法974条)

  • 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない
  1. 未成年者
  2. 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

ここで公証人の関係者が除かれております。試験問題では耳が聞こえない人とか被保佐人とかで問われることがありますね。

注意しておきたいのは2項です。文言がすっと頭に残る人はいいですが、自分自身も含めてまったくスッと入ってこないと思います。推定相続人の直系というところがポイントで、父親の遺言書を想定すると、叔父さんはセーフです。

さて、遺言書はその性格上財産の開示に近いため、証人を頼む場合に友人知人を避ける傾向にあるのです。では誰に証人を頼むのか?見ず知らずの人でも身元のしっかりした人になって欲しい、というのが人情では無いでしょうか。ということで行政書士や司法書士などが証人としてよく求められるようです。