分社化の手続き

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会社を分割すること考え始めた

分社化はどうやる?
 ~メリットとデメリット

温泉イメージ

ある会社が大きくなり、一部の事業を同業他社などに譲りたいというケースがあります。新聞などでA社が電池事業をB社に売却といった記事を目にされたことがあるかも知れません。事業を譲るというのはなにも大企業特有のものではなく、実は中小企業でもかなり起こり得ることなんです。

例えば、あるオーナー企業があり、少し大きくなったのでA事業とB事業のうち、B事業を分社化しようとかいうケースです。本当の小企業ならないかもしれませんが、そこそこの規模があれば起こっても不思議じゃないですよね。

また2代目、3代目社長になった法人では株主の状況が時間経過と共に錯綜しており、上手に処理したいというのもよくある話です。一番多そうなやはり、事業を売却するというのと新規事業を別会社にというケースだと思われます。

ここで分社化ということについてメリット・デメリットをちょっとまとめておきます。


分社化のメリット

異なる事業で給与体系などをわけやすい
当事務所でお話を伺ったことがある法人さんのお話しですが、まったく毛色の違う事業をいくつか持っている法人さんがいました。小さな事業が順調に大きくなり、取引先の要望もあっていくつか異なる分野にも手を広げてきたようです。
当然、事業内容は違っていて勤務時間とかも違うのですが、人事体系とかは一緒という感じでした。一方は営業成績が上がればボーナスがでますが、バックヤード部門はそんなことはありません。
こういったケースでは分社化することで、それぞれの事業の成果を明確にできますし、雇用条件に差をつけることもしやすくなります。
倒産リスクを分散
ある部門の赤字を補填しなければならなくなるような状態だと、黒字部門としてはボーナスが減ったりなど、いろいろな不都合が出てくるかも知れません。
一つの会社しかなければ、財務状況の悪化はすべてに影響します。ボーナスが減るくらいならまだしも、会社自体がなくなってしまうかも知れません。 このケースでも分社化させておくことで、影響を排除することが出来ます。
事業を分割相続(承継)させる
後継者となる子息が複数いる場合、会社を分社化してそれぞれの会社をまかせたいというケースがあります。持ち株会社を作ってその下にいくつかの事業会社をぶら下げるなどということも考えられます。

分社化のデメリット

管理工数の増加
一方でデメリットもあります。管理工数が増加するため、人件費や税理士手数料などが増えますし、法人住民税なども増えることになります。
これについては税理士の先生との相談が必要で一概にどちらが良いかは言えません。
許認可が新たに必要
また許認可が必要なケースですが、再度許認可のやり直しというパターンもあります。簡単な許認可ですと問題となるのは費用面くらいですが、申請からある程度の日数を必要とする場合などは、事業の継続性をどうしようかという点も考慮する必要があります。
分社化を実行しようとなれば、次の問題は具体的にどうやるのか?ということだと思います。

分社化を具体的にどうやるのか?

大企業の場合は法務部など専門部署がありますが、中小企業の場合はどうするのでしょうか?まず新会社を作るところまではできそうですが、B事業を新会社に移すにはどうしたらいいかというところで少し悩みそうですね。

新会社の経営陣の人事をどうするのかとか考え始めると社内的にも話を広げたくないでしょうし、まずネットで検索すると思いますが、そこでキーワードをどうするか。

よっぽど会社法などに詳しくない限り、「会社分割」とか「事業譲渡」という言葉は知らないと思いますが、「事業移転」とかで検索して、なんとか「会社分割」や「事業譲渡」という方法があることまではたどり着けると思います。経営者の方はここまでは自力でされるはずです。このページを読まれている方ももしかしたらそういった方かも知れません。

ですがこの先が問題です。「会社分割」や「事業譲渡」という方法があることまで理解できたとしてもその先はかなり専門的であり、よほど興味を持って調べたりしないと途中で挫折するのではないでしょうか。というより経営者にそんな時間はありません。

まず役員変更等でお世話になっている司法書士の先生に尋ねることが多いかも知れません。ですが、司法書士は「不動産登記」と「商業登記」の専門家ということになっていますが、圧倒的に不動産登記が多く、商業登記は会社摂理と役員変更しかやらないという方も多いと聞きます。

また商法大改正で「会社法」が「商法」からゴソッと抜け、その後の監査等委員会設置会社の出現などで最近の会社法改正をフォローし切れていない方も多いのではないでしょうか。

前置きが長くなりましたが、分社化したい!会社分割と事業譲渡という方法があることは分かった。じゃあどっちがよいのか?


会社分割か事業譲渡か?

事業の内容(許認可がらみ)や分社化するに当たっての日程感、利害関係者などによって違ってきます。一般的には、小規模の法人だと事業譲渡が向いている場合が多いのではないかと思われます。

ここでは両者について様々な角度から違いを説明します。

  • 契約書の問題
  • 債権者の問題
  • 法人登記(登録免許税)の問題
  • 許認可の問題

契約書の問題

事業譲渡する場合はA法人とB法人の間で、C事業を譲渡するという契約書を作成します。これはたんに商品を売るのと同じことで、事業の売買ということになります。

一方、会社分割の場合、A法人のC事業を分割し(独立させて)、新しくB法人を設立する(新設分割)、あるいはB法人にC事業を分割する(譲渡するという言い方の方がイメージしやすいですが、ここは「分割する」といいます)ということになります。

A法人を分割会社、B法人を分割設立(分割承継)会社といいます。

新設分割の場合 分割計画書といい、A法人が計画書を作成します
会社分割の場合 分割契約書をA法人とB法人で作成してそれぞれの承認機関で承認します

A法人が合同会社以外の持分会社(合名・合資会社)の場合、会社分割の分割会社になることはできません。株式会社や合同会社のときに分割会社となることが出来ます。

譲渡契約や分割計画(契約)を作成した後は、それらを承認する必要があります。基本的に承認機関は株主総会の特別決議です。簡易な譲渡、簡易な分割などもありますが、取締役会などが設置していない場合は特に変わりませんので割愛します。

会社分割などの流れや登記に必要な事項については下記のページを参照ください。


債権者の問題

A法人に対する債権者が、「C事業はA法人の虎の子の事業だ」と考えているとしたらどうでしょうか。C事業があるからA法人に多額の社債を引き受けているのにとか、C事業があるから納品3ヶ月後の代金回収を設定しているのにというケースです。事業譲渡するにせよ、会社分割するにせよ、ちょっと困りますよね。

そういうことなので、会社法は事業譲渡の場合、個別に債権者異議手続きをすることを求めています。すべての債権者に対し、「事業譲渡するが、よろしいですか?」というお伺いを立てるわけです。債権者の数が少なければどうってことはないですが、多くなってくるとそもそも連絡が付かなかったりして困難になることが目に見えています。それを解消できるのが「会社分割」になります。

勿論、債権者異議手続きをしないという訳じゃなく、簡単にできる方法が使えるということです。

債権者異議手続き
  • 個別の催告
  • 官報公告
  • 定款に記載されている公告方法
法基本的には個別の催告と官報公告が必要です。ですが、個別の催告というのは上記事業譲渡と同様でかなり面倒な作業になります。そこで会社法は二重公告でお茶を濁すことを認めています。つまり、官報公告と定款に記載されている公告方法を行うことで、煩わしい個別の催告を省略することができるんですね。
ただし、一つ注意点があります。殆どの中小企業では定款に記載されている公告方法が官報で公告するとなっているはずです。この場合は二重公告でお茶を濁すことが出来ないんですよね。定款が見当たらないという会社もたまにあるようですが、この定款記載の公告方法は登記事項になっているので、登記事項証明書を取得すると書いてありますのでご確認ください。
どうすればよいか?
これは定款の変更をするしかないです。
公告方法を「新聞などで公告する」というふうに変更を行います。勿論、公告方法は登記事項なので、株主総会特別決議で決議し登記申請する必要があります。余談ですが、ほんの一瞬だけ公告方法を変更してまたすぐに戻している会社を見たことがあります。たぶんお茶を濁したかったんやろうね・・・。

会社分割などの流れや登記に必要な事項については下記のページを参照ください。


法人登記(登録免許税)の問題

B法人を新たに設立するケース
新規B法人に事業譲渡する場合、会社の設立登記が必要となってきます。株式会社の場合は資本金の0.7%最低15万なので、資本金1000万円としても15万円が必要となります。
一方新設分割する場合、新設分割による設立登記となります。
既存B法人へ事業譲渡するケース
B法人で定款の目的蘭変更がなければ特に不要。目的欄の変更があれば、登記事項なので、登録免許税が3万円
会社分割の場合は、会社分割による変更

許認可の問題

宅建業者(不動産屋さん)や建設業者はその事業をするにあたって、都庁などの関連省庁に免許申請をしております。こういった法人が宅建事業なり、建設事業なりを事業譲渡(会社分割)するというケースはままあるかと思います。

事業譲渡は法人登記が不要なケースもあり、こちらを選択したいなという場合もあるかと思いますが、許認可のことを考えると必ずしもいいとは言えません。事業譲渡だと承継を認めていないケースがありますし、事業譲渡にしろ、会社分割にしろ、新たに許可申請のやり直しが必要なケースもあります。費用・時間を考慮することになりますが、こと許認可絡みの場合、会社分割を考える方が一般的には良さそうです。

会社分割などの流れや登記に必要な事項については下記のページを参照ください。

許認可関係でどうなるのか?という場合は下記ページを参照ください。

また会社法・商業登記法・不動産登記法・許認可と検討すべき項目が多岐にわたっております。もっと詳しく知りたいという場合は当事務所へお問い合わせください。

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