許認可と分社化

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許認可がどうなるのか?

分社化と許認可
 ~避けて通れない問題

温泉イメージ

許認可を必要とする業種を事業とする会社において、分社化を検討する場合、「許認可がどうなるのか?」について考慮することは避けて通れません。

まずは分社化すると許認可がどうなるのかについて簡単にまとめました。

分社化と許認可について
(比較的件数が多いと思われる業種です)
当然承継(但し事後的な届出は必要)
  • 飲食店営業の許可(食品衛生法53条)
事前の許可が必要となる許認可
  • 旅館業の許可(旅館業法3条の2 1項)
  • 風俗営業(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律7条の3)
許認可必要
  • 宅地建物取引業(宅地建物取引業法3条)
    • 企業再編における許認可の引き継ぎは認められない
    • 組織再編(合併、分割、事業譲渡等)が行われた場合でも、存続会社や承継会社側で既に取得している宅建業免許に影響はない
  • 旅行業(旅行業法3条)
    • 16条を読むと営業保証金が承継されると書かれているが、旅行業の登録は承継しない
    • したがって、合併前に新規申請が必要となる。 まず組織再編の前に承継(存続)会社で新規に旅行業登録を受け、組織再編後に事業を移行(変更申請)する
関連条文
抜粋
食品衛生法 53条 前条1項の許可を受けた者(以下この条において「許可営業者」という。)について相続、合併又は分割(当該営業を承継させるものに限る。)があつたときは、相続人(相続人が2人以上ある場合において、その全員の同意により当該営業を承継すべき相続人を選定したときは、その者)、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該営業を承継した法人は、許可営業者の地位を承継する。
2 前項の規定により許可営業者の地位を承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
旅館業法 3条の2 前条1項の許可を受けて旅館業を営む者(以下「営業者」という。)たる法人の合併の場合(営業者たる法人と営業者でない法人が合併して営業者たる法人が存続する場合を除く。)又は分割の場合(当該旅館業を承継させる場合に限る。)において当該合併又は分割について都道府県知事の承認を受けたときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該旅館業を承継した法人は、営業者の地位を承継する。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 7条の3 風俗営業者たる法人が分割により風俗営業を承継させる場合において、あらかじめ当該分割について国家公安委員会規則で定めるところにより公安委員会の承認を受けたときは、分割により当該風俗営業を承継した法人は、当該風俗営業についての風俗営業者の地位を承継する。
2 4条1項の規定は、前項の承認について準用する。この場合において、同条1項中「前条第1項の許可を受けようとする者」とあるのは、「7条の3 1項の承認を受けようとする法人」と読み替えるものとする。
3 7条5項の規定は、1項の承認を受けようとした法人について準用する。この場合において、同条5項中「被相続人」とあるのは、「分割をした法人」と読み替えるものとする。
宅地建物取引業法 3条 宅地建物取引業を営もうとする者は、2以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあっては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあっては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。
旅行業法 3条 旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない
16条 旅行業者が死亡し、旅行業者たる法人が合併により消滅し、若しくは分割によりその事業の全部を承継させ、又は旅行業者がその事業の全部を譲渡したため、第20条の規定による登録の抹消があった場合において、その日から6月以内に、その相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人、分割によりその事業の全部を承継した法人又はその事業の譲受人が旅行業の登録を受け、かつ、旅行業者であった者が供託した営業保証金につき権利を承継した旨の届出を観光庁長官にしたときは、その営業保証金は、新たに旅行業者となった者が第7条第1項の規定により供託した営業保証金とみなす。

宅建業のケース

事業をおこなう上で、一番気に掛けなければいけないことは事業の継続性です。この点に絞って説明します。

事業の継続性
会社分割(吸収分割)、会社分割(新設分割)、事業譲渡の3ケースについて宅建業の免許がどうなるのかについて説明します。すべてのケースでA社は宅建業者であり宅建事業を譲渡する会社、B社が宅建事業の譲渡を受ける会社とします。
新設分割 吸収分割 事業譲渡
B社が宅建業者 B社を設立後、新規取得 継続可能
宅建業者ではない 新規取得
宅建免許を持っている会社が、宅建業に関する事業を会社分割して分割設立会社を設立する場合、宅建業免許は新たに取得し直す必要があります。
一方、宅建業に関する事業を吸収分割しあるいは譲渡する場合、事業を受け取る側の会社が宅建業免許を取得していなければ、新たに宅建業免許を取得しなければなりません。継続することはできません。事業を受ける側の会社が宅建業者であれば、その免許をそのまま継続することが出来ます。(承継ではなく、もともとの免許を利用できるという意味です)
継続するにはどうするか?
新設分割のケースでは、どうしても設立して初めて宅建業免許の申請という手順になります。そのため、新設分割手続の前後を通して宅建業務を継続的に行うことはできません。
  1. 新設分割
  2. 免許申請
  3. (保証協会加入申込)
  4. 審査
  5. 営業保証金供託
  6. 免許証交付
上記免許証の交付までの期間は、宅建業を行えない状態になります。
事業譲受する、あるいは分割を受けるケースでは、受け取る側で宅建業免許を取得していればそのまま継続することが出来ます。受け取る側で免許を取得していなければ、新設分割と同様になります。
以上から、新たに作った会社に引き継がせるという場合では、吸収分割か事業譲渡を選択することになりますが、スケジュールの調整とともに引受側会社がそもそも宅建業の要件を満たしているのかが重要になってきます。

もっと詳しく

会社分割などの流れや登記に必要な事項については下記のページを参照ください。

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