相続土地国庫帰属制度もうすぐ

 こんばんは。1月もいよいよ終盤。来週の半ばから2月。寒さはいよいよ佳境へ。事務所が古いビルに入っているせいかものすごく寒い。エアコンを回しててもなかなか暖まらない。たぶん断熱性能が低いんやろうね。

 タイトルにもあるように、今年の4月から相続した不要な土地を国庫に帰属させる「相続土地国庫帰属制度」が始まります。いろいろと制約はあるものの、まったく使いでのない土地は引き取って貰うのが治安の面からも一番ええと思う。いくら固定資産税が安いからっていってほったらかしてて知らんうちに不法投棄されたり、悪人のアジトとかになってたりするとイヤやしね。

 この制度、基本申請は本人申請やけど、書類を作るのが困難な場合は専門家にお願いすることも想定されている。で、その専門家は弁護士・司法書士・行政書士というように規定されました。東京都行政書士会でも宮本会長がことあるごとに強調されてるからご存じの先生も増えてきてると思います。

 特に特定行政書士は不服申立できるから、書類作成段階から積極的に関わって行ければなぁって考えてます。まったく使えんって言われ、実際に使える状況もないため取得者数もそれほど増えなかった「特定行政書士」の資格。ようやく日の目を見た感じやね。でも蓋を開けてみたら・・・やっぱり使えんかった・・・ってのありそうで怖いけどね。

「高齢者OK」賃貸 低迷… 登録目標の2%

おはようございます。読売新聞(ヨミドクター)に気になる記事がありましたので、引用しておきます。

(平成30年10月27日 読売新聞ヨミドクターから引用)

一人暮らしの高齢者らの入居を拒まない賃貸住宅を増やすため、国土交通省が昨年10月に始めた「住宅セーフティネット制度」が低迷している。同省は2020年度末までに17万5000戸を登録する目標を掲げるが、開始1年での登録戸数は約3800戸と目標の2%どまり。同省は煩雑な登録手続きを簡素化するなど対策に乗り出した。

単身高齢者や低所得者、外国人らは、孤独死や家賃滞納を心配する不動産会社や家主に入居を拒まれるケースが多い。一方、少子高齢化で空き家やアパートの空き室は増えている。こうした人たちが住宅を借りやすくするため、同省は、入居を拒まない物件情報を登録し、専用のホームページで紹介する制度を始めた。

登録された住宅の家主には、国と自治体が改修費を最大200万円補助するほか、家主が家賃を減額すれば1戸あたり、毎月最大4万円まで減額分を補助する。さらに、一人暮らしが不安な入居者を見守る団体の運営を補助する仕組みも取り入れた。

しかし開始1年での登録戸数は全国で3834戸(10月26日現在)にとどまる。その大半が大阪府(2712戸)で、次に多いのが東京都の267戸。一方、茨城や栃木、三重など14県では登録戸数がゼロだった。ある自治体担当者は「家主側からの問い合わせすらない」と話す。

同省は、制度が知られていないことに加えて、登録手続きが煩雑で、手数料を求める自治体もあることが背景にあると見ている。また、改修費や家賃の補助を行うかどうかは自治体任せで、今年度、いずれかの補助を行うのは30自治体にとどまる。

使い勝手を良くするため、同省は7月に登録手続きを簡素化。これを受けて手数料を廃止した自治体もある。今後、各地で賃貸業者向けの説明会を開き、PRを強化する方針だ。日本賃貸住宅管理協会(東京)は、「家主側の制度への認知度が低いが、空き家の活用は大きな課題。登録のメリットをアピールして増やしていきたい」としている。

住宅セーフティネット制度

昨年10月に改正された住宅セーフティネット法に基づく仕組み。家主が、高齢者らの受け入れを拒まない賃貸住宅として都道府県などに申請。耐震性や部屋の広さなどの基準を満たせば物件が登録される。拒まない対象者を、高齢者のみ、障害者のみ、などと限定することもできる。

(引用ここまで)

この制度が出来た当初、私も東京都庁の担当部署へ話を伺いに行ったことがあります。この記事にも書かれていますが、発足当時は登録手続が煩雑でした。その後少し改善されましたがまだまだ大変です。

煩雑であればあるほど行政書士としては仕事になりますが、登録する大家さん側にたてば、費用を掛けてまで登録するかと言われれば、メリットと秤に掛けて躊躇してしまう方も多いのではないでしょうか。

メリットとして家賃を減額すれば、その分を自治体から補助が出るという制度をうたっていますが、なんか使いにくいなという印象です。

減額して自治体から補助が出るのはいいとしても、大家さん側からみれば一手間かかります。よほど空室が埋まらないケース以外はそもそも貸し出そうとするインセンティブが働かない。「補助を受けると家賃収入がトータルでプラスになる!」とかでなければ動きにくいのではないか?

また生活保護を受けている方を対象とする貧困ビジネスが問題となったりしますが、生活保護受給者を対象とする家賃収入も基本的に同じスキームなんです。つまり、いったん受給者へ支払われそこから家賃を大家さんへ支払うことに変わりありません。

自治体から家賃分を差し引いた金額を受給者へ支払い、家賃分を大家さんへ直接支払うという風になれば、参加される方は劇的に増えるのではないかと思います。自治体の仕事が増えますので現実的には難しいのかも知れませんが、考えて欲しいなって思います。

所有者不明の空き家問題、マンションでも深刻に

おはようございます。暑い日が続いています。また台風の当たり年っぽいし、まだまだ不安定ながらも猛暑が続きそうです。暦の上では立秋ですけど・・・。

さて、空き家問題で気になる記事がありましたので、引用しておきます。

(日本経済新聞2018年8月5日付けから引用)

政府が対策に乗り出した所有者不明の不動産問題は、分譲マンションでも深刻になってきた。管理費などを徴収できず、区分所有法に基づくマンション管理が難しいケースが出ている。今後老朽化マンションが増えれば相続を放棄される部屋が増える可能性も高い。新たなルール整備を求める声もあり、東京都は独自に条例制定の検討に入った。

「管理費や修繕積立金はどうするんだ」

2018年1月、埼玉県内のマンションの管理組合が開いた臨時総会。理事長の説明に出席者の多くは衝撃を隠しきれなかった。24戸のうち3戸の区分所有者の氏名と住所を特定できないという内容だったからだ。

空き室のままで管理費などの滞納が続いていた。支払期日から5年近く経過し、支払請求権の消滅時効も迫っていたことから、管理組合は家庭裁判所に対し、不在者財産管理人の選任を申し立てる決議をした。ただ同管理人に部屋を売却してもらっても、滞納分に見合う売却代金を得られるかは不透明だ。

(中略)

国土交通省が16、17年にマンション管理組合を対象に実施した調査によると、回答した639組合のうち、連絡がつかない所有者らが存在するのは87組合(14%)に達した。87組合のうち築30年以上40年未満が24%、築40年以上のマンションが29%を占める。

所有者が分からなくなるのは「相続に伴って区分所有権の移転登記がされないのが一因」(旭化成不動産レジデンスの大木祐悟主任研究員)だ。

「居住者の高齢化が進んでいるのが心配だ」。東京都内の築50年強のマンションの管理組合の理事はこう打ち明ける。所有者が死亡し管理費の滞納が続いた部屋があった。弁護士に依頼して相続人を見付け回収したが、多大な労力やコストがかかった。理事は「同じ問題が続けば対応できない」と危惧する。

さらに相続そのものがされないケースも広がっている。埼玉県の別のマンションでは管理組合が突き止めた区分所有者(死亡)の子が相続を放棄した。管理組合はさらに手間をかけて、物件の競売手続きを迫られた。

老朽化で資産価値が下がり、管理費も滞納しているマンションは相続する魅力に乏しい。富士通総研の米山秀隆主席研究員は「将来は市場価値の下がったマンションの多くが相続放棄されてしまうだろう」と予測する。

17年時点で180万戸超の分譲マンションがある東京都は18年3月に「マンションの適正管理促進に関する検討会」を設置した。検討会では管理組合に管理状況を5年ごとに行政に届け出てもらう制度の創設や、分譲会社などの事業者に対して管理組合の管理のしやすさに配慮した物件供給に努めるよう求めることなどを議論中だ。

都マンション課は「事業者に引き渡し時に長期修繕制度の情報をさらに詳しく示させたり、販売後も管理に必要な支援を充実させたりすることなどが議論のテーマになりうる」と説明する。

検討会に参加する不動産協会(分譲会社などが加盟)は「マンション管理を充実し、資産価値を保つ取り組みは、所有者不明物件の増加を防ぐうえで大切だ」と話す。検討会は11月をめどに報告書をまとめる予定で、都はそれを踏まえて条例化を検討する。

(引用ここまで)

この記事で気になるポイントはいくつかありますが、まずは管理組合に管理状況を5年ごとに行政に届け出てもらう制度の創設ですね。マンション管理会社とマンションの理事会で管理組合を運営しています。

行政書士としては、行政への届け出はどういうスキームになるのか興味がありますね。無茶な要求をすると従来の組合にとっては負担が増加しますし、管理会社からの届け出って形になるんでしょうか?でもそうなると管理費が値上がるかもしれませんね。もしかしたらマンション管理士に白羽の矢が立つようなお仕事になるのかも知れませんね。

もう一つは、相続に伴って区分所有権の移転登記がされないのが一因、ってところです。ここでは区分所有権の相続登記について述べられていますが、なにも区分建物に限った話ではありません。普通の戸建て住宅でも同様の問題が起こっていて、現在は義務ではない不動産登記をどうするのかといったことが議論されています。

空き家問題として、民泊にするか、弱者向けの部屋にするかということも考えられるのですが、どちらにしても管理組合との相談がやはり必要になってくるんでしょうね。いずれにしても所有者がはっきりしないと先に進みません。

「断らない賃貸」広がらず 高齢者支援策、家主にリスク

おはようございます。ゴールデンウィークも今日が最終日ですね。昨年末から何度か書いていた住宅確保要配慮者向けの登録について記事があったので引用しておきます。

(朝日デジタル2018年5月6日付けから引用)

所得の少ない人やお年寄りらの賃貸入居を「断らない住宅」を増やそうと、国土交通省が始めた制度に登録された住居の数が、目標の0.4%にとどまっている。2020年度に17万5千戸の目標だが、現在は622戸。スタートから半年だが、自治体が支援に及び腰で、家主が登録に二の足を踏んでいるのが要因だ。

制度は2017年10月に施行された「新たな住宅セーフティーネット法」に基づいて新設された。低所得者や高齢者、障害者など「住宅確保要配慮者」の入居を家主が断らない住宅を自治体に登録してもらう。家主は家賃滞納などを警戒し、高齢者や障害者らの入居に拒否感を抱きがちだ。実際に入居を断るケースもあり、こうした現状を打破しようとのねらいがある。

家主は、空き家の場合の改修工事に最大計200万円、家賃補助に月最大計4万円の支援を国、自治体から受けられる。法律上の義務はないが、国交省は予算を確保。実際に事業を行うかどうかは自治体に任せる。2月に閣議決定した「高齢社会対策大綱」では、20年度に17万5千戸の登録目標を掲げた。政府は、この制度を空き家の活用策と位置づけ、将来的に面積、築年数などの条件を満たした約50万戸を住宅確保要配慮者向けの住宅にする構想だ。

しかし、現時点での達成率は0.4%。都道府県別では、多い順に大阪237件、山梨88件、岡山54件だが、東京や愛知のように0件の自治体もある。背景には、財政難などを理由に家主への支援策が低調なことがある。国交省が昨年度、事業を実施する意向のある自治体を募ったところ、数十自治体にとどまった。18年度の当初予算段階でも同様の規模で低迷しているとみられる。賃貸住宅の業界団体の担当者は「制度にはうまみがない」と話す。

(引用ここまで)

制度にうまみってコメントがありますが、まず登録のハードルが高いですね。民泊(住宅宿泊事業者)の届出もそうなんですけど、個人でやろうとすれば登録の段階で嫌になってしまいます。

またすでに生活保護の方に住居を貸している場合には対象にならないとかの問題もありそうです。せめて家賃補助の件は入居されているケースに対しても対象に含めるように制度を変えて欲しいですよね。

一番いいのは、大家さんと借り手との契約ではなくて、大家さんから自治体への賃貸借契約にできればかなり効果的なんですけどね。自治体は管理できないから難しいでしょうが。

「住宅弱者」も入居しやすく 都、3万戸登録へ

こんばんは。昨年末に行政書士の空家対策の研修で要配慮者向けの登録制度について説明を受けましたが、その関連記事があったので引用しておきます。

(日経新聞、2018年2月21日付けから引用)

東京都は2025年度までに高齢者や低所得者らが入居しやすい住宅を3万戸登録する。アパートの空き部屋などを高齢者など向けの専用住宅として登録すれば、大家に改修費や家賃を補助する制度も18年度に創設する。独り暮らしの高齢者の増加や若年層の収入減で、自力で住宅を確保できない世帯が増えている。「住宅弱者」の安全網となる民間住宅を増やす。

高齢者は入居を断わられることがある

2017年10月の改正住宅セーフティネット法の施行を受け、都が計画案をまとめた。25年度までに高齢者や障害者、低所得者らの入居を拒まない住宅として、3万戸の登録をめざす。

独り暮らしの高齢者や低所得の若年層、ひとり親世帯などは家賃の支払いを不安視され、入居を拒まれる事例が少なくない。高齢者の単身世帯は孤独死のリスクもある。仮にその部屋が「事故物件」となれば、大家は想定していた賃料をその後に得られず、経済的な損失を被りかねない。

このため都は18年度、登録住宅に高齢者や低所得者を入居させる場合、市区町村を通じて大家に月最大1万円を補助する制度を新設する。国や市区町村とあわせ、大家は月最大4万円の補助を受けられる。家賃の保証会社にも市区町村を通じて最大1万5000円を補助する。

アパートの空き部屋などを高齢者らの専用住宅として登録すれば、改修費を補助する制度も創設する。最大で100万円を上限に耐震化などにかかる改修費の3分の1を補助する。この場合、国や市区町村の補助とあわせて大家の負担は6分の1で済む。

改修費と家賃の補助などの関連経費として、18年度予算案に約2億5000万円を計上した。

高齢者らを入居させる大家を支援するため、入居者の見守りや家賃を債務保証する「居住支援法人」も新たに指定する。日常の見守りなどで入居者の生活を支援してもらい、大家が安心して高齢者に部屋を貸せる環境を整える。居住支援法人は国から年最大1000万円の支援を受けられる。

自力で住宅確保が難しい世帯への住宅供給は、これまで公営住宅が中心的な役割を果たしてきた。ただ公営住宅は入居要件が限られており、単身世帯の高齢者らが入居できない事例も多い。

一方、民間の空き家や空き部屋は増加傾向にある。都はこうした民間住宅を「準公営住宅のような発想」(都幹部)で活用し、高齢者の単身世帯や低所得者の住宅の安全網としたい考えだ。

(引用ここまで)

前回、研修の後自分でも申請のやり方をチェックし、すぐに都庁の担当部の方とコンタクトを取らせていただいたと書きましたが、今回真新しい情報としては大家さんが月額最大4万円の補助を受けられるということですね。

このメリットはかなり大きいと思います。新しく新設されるということが書かれているだけなので、具体的にどうなるのかわかりませんが、空き家などで困っている方はチャレンジしてもよいかと思われます。

空家対策の研修2回目

こんばんは。先日、東京都の行政書士会主催で第2回目の空家対策研修ありましたので、参加してきました。

前回はどちらかというと空家に関する自治体の条例説明や、今後自治体から条例を策定するに当たって意見を求められた場合に念頭におくべき項目などについての研修でしたが、今回の研修は、空家を抱えているオーナーさんが特定対象者(住宅確保要配慮者)向けに貸し出すことを目的とした新セーフティーネット制度についてのお話しでした。

このセーフティーネットというのは、「住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録」制度であり、つい先日施行されたばかりの制度です。まだまだ手探り状態の域を出ていませんが、不動産をお持ちの方で長期間の空室を抱えている大家さんにとっては登録するメリットがあるように思える制度です。また賃貸物件を預かって管理している不動産屋さんにとってもオーナーさんに対して登録を勧めたりすることも考えられます。

自分自身でも賃貸不動産を所有しているのもあり、人に勧める前にまずは登録してみようと考えたのですが、これがなかなかハードルが高い。

自治体や国土交通省のホームページを検索してみたりしたが、よく分からない部分が結構あります。また事前に担当部署へ面談なりの調整をしてくださいという感じでホームページにも記載がありましたので、質問事項をまとめて都庁の担当部署へお伺いしてきました。

登録や申請、更新がかなり面倒であることなど必ずしも使いやすい制度ではなさそうだが、大家さんにとっても使うメリットはありそうという結論です。勿論、申請が面倒ということなので行政書士の出番はかなりあると思われます。

また今回、行政書士会に対してこの住宅確保要配慮者向け賃貸住宅制度の研修がなされたということは、自治体側としても行政書士に積極的に関わって欲しいという考えからのことだと認識しております。年明けはちょっと力を入れてみようかと考えております。

ご興味のある方や質問でもかまいません、一緒に検討していきましょう。

空家対策の課題研修を受けて

先週、空き家対策をめぐる展望と課題ということで行政書士東京会の研修に参加してきました。講師は上智大学の北村先生です。

古くからいろいろな市町村などで空き家に関連する条例があったが、空き家に対する苦情をうけた所沢市が窓口を一本化するため、「空き家等の適正管理に関する条例」を制定。始めて空き家対策に特化した条例となったとのことです。その後、その条例が取り上げられて有名になり、後追いで法制化されたということです。

講義では主に条例と法律の役割分担や、実際に代執行することになった事例が紹介されました。また認定の基準やガイドラインについては実際にどのようになっているのかという視点ではなく、各条例ではどのように決められているのかの比較や、法律の立場、認定の処分性という法律学的なアプローチでした。

今後条例を制定していく自治体から法律の専門家に対して相談があれば、気をつけるべきポイントがどこにあるのかを法律家として答えることが出きるようにというスタンスです。

北村先生の語り口も面白く、個人的には大学の授業のようで楽しめましたが、どちらかといえば自治体側が条例を制定したり実際に認定したりするときの問題点を煮詰めようという切り口でした。実際に空き家を抱えている側としてはどうすればよいか?という面はこれから考えていく必要がありますね。