節税目的の養子縁組「ただちに無効ではない」 最高裁

おはようございます。これ少し前にでた問題ですが、最高裁の判決が確定しました。お仕事や試験に直結する方もいらっしゃると思います。

(朝日新聞2017年1月31日付けから引用)

相続税対策を理由に、孫を養子にした男性(故人)の養子縁組が有効かどうかが争われた訴訟で、最高裁第三小法廷(木内道祥裁判長)は31日、「節税目的の養子縁組であっても、ただちに無効にはならない」とする初めての判断を示した。「節税目的の養子縁組は無効」とした昨年2月の二審・東京高裁判決を破棄し、「有効」とした一審・東京家裁判決が確定した。

(中略)

15年の一審判決は、男性が養子縁組の書類に自ら署名していることなどから、「養子縁組の意思があり有効」と判断した。一方、二審判決は、孫を養子にすることで節税効果があるとの説明を男性が税理士から受けていた点を指摘。養子縁組は節税が目的で「真の親子関係をつくる意思はなかった」として無効とした。

第三小法廷はこの日、「節税目的と縁組をする意思は併存しうる」と指摘。専ら節税のためであっても、ただちに民法が縁組を無効にできると定めた「縁組の意思がない時」に当たるわけではない、と述べた。二審判決は「縁組には『真の親子関係をつくる意思』が必要」としていたが、第三小法廷はこの点には言及しなかった。そのうえで、今回のケースでは「縁組の意思がなかったとうかがわせる事情はない」として、養子縁組は有効と結論づけた。(千葉雄高)

(引用ここまで)

感情的にはダメなんでしょうが、法律的には認められたという感じでしょうか。孫を養子にするというのは相続税対策でよく知られていましたが、お墨付きをもらった格好になります。それにしても遺産相続に絡む最高裁の判例って多いですよね。相続に絡む金銭問題が如何に熾烈を極めるのかを示しているようで、なんか考えさせるモノがあります。

遺留分の計算(民法1029条)

おはようございます。昨日は相続分の計算について、特別授与がどうなるのかについて書きましたが、本日は遺留分について書いてみます。

まずは遺留分の計算方法ですが、これはいろいろなサイトなどに書かれていると思うのでさらっというと、相続分の半分です。(すごく乱暴ですが)

遺留分算定基礎額における特別授与

  • 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する(1029.1)

まとめると次のようになります。(比較するために相続財産も記載してます)

相続財産 = 死亡時の財産 + 特別受益額

遺留分算定基礎額 = 死亡時の財産 + 贈与 – 死亡時の債務

死亡時の債務というのが控除されていますが、だいたい相続財産の計算と同じです。


贈与について

贈与と特別受益の違いが気になると思います、贈与について条文には次の通り書かれております。

  • 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する(1030前半)
  • 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする(1030後半)
  • 遺留分権利者は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる(1031)

つまり、遺留分算定の基礎における贈与とは次のようになります。

  • 死亡の1年前から死亡時までにしたものが対象
  • 当事者双方が遺留分のある相続人に損害を加えることを知っていた場合は遡る
  • 遺贈は贈与に含まれる

特別受益の扱い

相続分の計算では特別受益の対象となる贈与はどこまでも遡りました(昨日のブログ参照)。相続人間の公平という観点からするとよく分かります。一方、遺留分の方は、遡れるのが1年前までの贈与となります。あんまり昔のことを言われてもという感じでしょうか。

おまけですが、他に注意するポイントは、

  • 遺留分の権利者が亡くなった後、承継人でもできる
  • 遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う(1034)

相続分の計算(民法903条)

おはようございます。本日は、相続分の計算と遺留分の計算の相違です。相続分や遺留分の具体的計算方法については、いろいろなサイトに書かれていますが、「あれ?どうしてそうなるのか?」とか、「どっちがどっちだっけ?」、となることがあるようなので、どうしてそうなるのかを中心に考えたいと思います。

特に問題として取り上げたいのが、特別受益者が受け取った受益分です。

特別受益

まず特別受益とは何か?条文から引用してみます。

  • 共同相続人中に、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者(特別受益者)があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなす(903.1前半)

長々と書かれていますが、要するに「婚姻とか生計の資本として贈与を受けていたもの」が特別受益者となり、受け取ったそのものが特別受益になります。


特別受益者の例:

  • 婚姻のお祝いとして親父から援助を受けていた兄A
  • 生活が苦しくて親父から援助を受けていた弟B

相続財産

さて、それでは相続財産はどうなるのでしょうか。まず条文です。

  • 特別受益者は、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする(903.1後半)

まとめると次のようになります。

相続財産 = 死亡時の財産 + 上記特別受益額

つまり、親父が亡くなったときの財産をベースにするのではなくて、結婚祝いで兄がもらった分や、生活援助を受けていた弟の分を考慮しましょうということです。でないと、何ももらっていない娘がかわいそうですからね。

氏の変更について(民法791条)

おはようございます。本日は氏の変更についてです。通常、子は父母の氏を称しますが、離婚や非嫡出子のように父母と違う氏を称することがあります。

父母が離婚した場合の子の氏

これ条文がありません、ということは変わらないということです。婚姻中の氏がそのまま子の氏として継続されます。

例として、磯野さんとフグ田さんが結婚してフグ田を名乗っていたが、離婚したと考えてください。サザエさんは磯野サザエに戻りますが、タラちゃんはフグ田タラオのままということです。

一般的に日本では、婚姻すると夫の氏を称することが多いですし、また、離婚すると母親が子供の親権者になることが多いです。

特に何もしないと母と子の氏が異なった状態になりますが、そういう家庭はあんまり見かけませんよね。だいたいは、子と違う氏になることを嫌う母親が、旧姓に復氏した後に届出をして婚姻中の氏に戻すそうです。子の氏を母親に合わせるというのはかなりハードルが高いので、そのようにするみたいです。

子の氏の変更

  • 子が父又は母と氏を異にする場合、家庭裁判所の許可を得て、届け出によって、父又は母の氏を称することができる(791.1)

父母が養子になった場合の子の氏

これも条文がありません、ということで氏はそのままということです。

例えば、鈴木さん(夫)と佐藤さん(妻)が結婚して鈴木を名乗っていたとします。あるとき、鈴木さん(夫)が脱サラをして妻の父親である政治家の地盤を引き継いだと考えてください。だいたいこの場合は佐藤家に養子に入ります。この場合、両親は佐藤ですが、子の氏は鈴木のままです。でもちょっと違和感を感じることが多く、多くの場合は子の氏を変更しています。

氏の変更

  • 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、届け出によって、その父母の氏を称することができる(791.2)

まとめると、

原則:家庭裁判所の許可 + 届け出

例外:届け出のみ(父母が婚姻中且つ、父母と氏が違う)

試験ではもう一つ重要なことがあります。

  • 1項~3項によって氏を改めた未成年の子は、成人に達したときから1年以内に届け出によって、復氏できる(791.4)

親権者の変更について(民法819条)

おはようございます。本日は親権者の変更についてまとめてみます。通常、父母が共同親権者となりますが、離婚やそもそも非嫡出子の場合などでは親権者は一人だけになります。この辺りの条文から(端折っていますので注意ください)

離婚した場合の親権者

  • 協議離婚をするときは、その協議で一方を親権者と定めねばならない(819.1)
  • 裁判上の離婚の場合には、裁判所が親権者を定める(819.2)
  • 子の出生前に父母が離婚した場合、母が親権者となる(819.3)

ここまではわかりやすいですね。(たぶん試験にも出ません。)それではこの状況からもう一方への変更はどうなるでしょうか?


親権者の変更

  • 出生前に父母が離婚した場合、出生後に父母の協議で父に変更できる(819.3但し)
  • 父が認知した場合、父母の協議で父を親権者と定めたら父が行う(819.4)
  • 子の利益のため必要あれば、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更できる(819.6)

協議だろうが裁判上だろうが離婚時にどちらかに定められた場合(注1)には、もはや父母の協議では変更できません。この場合は家庭裁判所の審判が必要になります。

  1. 定められないケースがあるということではなく、どちらかに定められます

子の出生時に母だけだったとか、婚姻外で出産した非嫡出子のように、当然に母が親権者になっていた場合のみ、父母の協議でも変更できるということです。一度も父母で協議をしていなかったので、一度限りは協議を許してやろうということなんでしょうか。

まとめると、

協議有り:父母の協議で変更不可能

協議無し:父母の協議で変更可能

次回は氏の変更について書いてみます。通常、子は父母の氏を称しますが、離婚や非嫡出子のように父母と違う氏を称することがあります。

遺言の証人と遺言執行者(民法974条、1009条)

こんにちは、本日は遺言の周辺知識についてです。

遺言にはいくつか種類がありますが、その中で一番オススメというか利用してほしいのが公正証書遺言です。その公正証書遺言の証人・立会人についてまとめてみます。

遺言の証人・立会人の欠格事由(974)

  • 未成年
  • 推定相続人・受遺者(+これらの配偶者+直系血族)
  • 公証人の配偶者(+4親等内の親族)、書記、使用人

推定相続人とは、遺言書を作成した時点で最先順位の相続人のことです。親族というのは血族6親等、姻族3親等です。実際によくあるパターンでまとめてみます。

配偶者B、子供Cがいる場合

  • BとCが該当します

配偶者B、子供なし、母親Dがいる場合

  • BとDが該当します

配偶者B、子供なし、父母なし、兄弟Eがいる場合

  • BとEが該当します。

これらの人は遺言の証人になれませんし、その配偶者もなれません。影響が大きいからです。

ここで直系血族という言葉が出てきました。配偶者と子供がいる場合を考えてみましょう。このときBの直系血族、Cの直系血族は若干被りますが、いわゆる親戚の中で該当しない人がでてきます。子供Cからみると父方の叔父さんとか母方の伯母さんとかです。その人たちってなんかものすごく利害関係人に見えますが、大丈夫なんですね。特に公証人の方が4親等の親族なので紛らわしいです。


さて、遺言ができれば次は遺言の執行になりますが、実際に遺言執行者を別に定めることもあるかと思います。そちらの欠格事由についてもまとめてみます。

遺言執行者の欠格事由(1009)

  • 未成年
  • 破産者

こちらはあっさりとしていますね。実際にきまった遺言書通りに執行するだけなのでこのような感じになっていると思います。

試験で注意するポイントとしては、

  • 破産者でも遺言の証人にはなれる
  • 被相続人の兄弟でも証人になれる(かなり大胆に書いてます、なれない場合もあるので注意。条文通りに覚えてください。)
  • 直系血族と4親等を混同しない