ボケてしまう前に相談を

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こんにちは。少しだけ緩んだとはいえ暑い日が続いています。日中は出歩きたくないですね。

さて、先日無料相談の相談員をしているときにある方から相談を受けたのですが、相続・後見という民事法務分野での典型的な事例だと思われますので、ここで紹介させていただきます。

ケース

  • 母親は事理弁識の能力を失い、数年前から施設に入っている
  • 母親の預貯金から施設の費用を出していたが、あと1年ほどで底をついてしまう
  • 母親のマンション持分権(残りの持分権はご本人)をご本人が買い取って(あるいは売却して)施設費用にあてたい

というようなものです。

当初かなりあった預貯金ですが、消費していくだけではいつかは底をついてしまいます。当然、本人も母親も施設入居時にはいつかそういう状況が来るということ認識されていました。ただ、もしそういう状況になれば、マンションの持分権を売却するなりして施設の費用にあてようという考えだったそうです。

ここで問題になるのは、ご本人が買い取ろうにも事はそうすんなりと進まないということなんですね。売買の当事者は行為能力者でなければなりません。つまりボケてしまった母親はマンションの持分権を持っていたとしてもどうすることもできないわけです。

勿論、成年後見制度というものがあり、家庭裁判所に対して母親を成年被後見人として認めて貰うよう申し立てることは容易です。母親が被後見人となれば後見人が代わって契約などを進めることができますので、一見良さそうに思いますが、ここにも問題点があるんですね。

まず費用の問題。後見人がついている限り後見人に対してずっと月額数万円の支払いが必要となってきます。いろいろな方のお話をお聞ききすると、これがなかなか踏ん切りがつかない最大の理由のようです。自分が後見人になって監督人をつけるというのもありますが、費用面で若干有利になる程度であり、ここでは割愛します。

次に、後見人が財産を処分することに同意してくれるのかという問題です。後見人は母親の財産を守ることが最優先のお仕事です。マンションの持分権を売って施設の費用にあてることをどのように捉えるかによってまったく売却できないかも知れません。

結局どうすれば良いのでしょうか?

どうすれば良かったのかというのであれば、いくつか案がありますが、現時点ではベストな答えはないというのが私の結論です。

ではどうしていたら良かったのか?について書いてみます。事理弁識の能力がなくなる前に遺言書を作成したり、財産を換金しておくなりしておけばよかったのではないでしょうか。ケースによっては家族信託という制度も使えるかも知れません。

自分が死んだ後やボケた後のことは考えたくもないというのが人情ですが、後に残った者はこのことで振り回されてしまいます。後手後手に回ってしまうと出来ないことも多くなりますし費用も嵩むのではないでしょうか。

身内に少しでも認知症の疑いなどが出てきたら、出来るだけ早めに専門家に相談されるなどなんらかの手を打って欲しいと思います。