民事保全法における口頭弁論(民事保全法3条)

こんにちは。本日は民事保全法における口頭弁論と決定の理由についてまとめてみます。試験でもポイントとなるところなので取り上げてみます。

まず民事保全法とはなんぞや?ということで簡単に説明してみます。貸付金がなかなか返して貰えないため、支払督促を行ったりすることはよくありますが、あの手この手で逃げようとする債務者がままいます。こういった場合に備えて民事保全法では3種類のやり方が用意されています。

民事保全3種類

  1. 仮差押え
  2. 係争物に関する仮処分
  3. 仮の地位を定める仮処分

それぞれの特徴をまとめてみます。

仮差押命令

  • 金銭支払いの強制執行ができなくなりそうなときに発することができる(20.1)
  • 一般的に貸したカネを返してほしい債権者を想定してください

係争物に関する仮処分命令

  • 債権者が権利を実行できなくなる恐れがあるときに発することができる(23.1)
  • 不動産をもらうことになっていたが、金銭に困った譲渡人がその不動産を売渡そうとしているようなケース

仮の地位を定める仮処分命令

  • 争いがある権利関係について債権者に著しい損害が発生しそうなときに発することができる(23.2)
  • 出版差し止めとか、結構幅広く利用できる

今回は、民事保全法における口頭弁論についてなので、まずはその周辺の条文です。(端折ってますので注意)

口頭弁論の有無について

  • 民事保全の手続きに関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる(3)
  • 仮の地位を定める仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立会うことができる審尋の期日を経る必要がある。但し、目的を達することができない事情があるときはこの限りではない(23.4)

口頭弁論は基本的には不要だが、仮の地位を定める仮処分の時は必要と書かれています。何かを差し押さえたい債権者がおおっぴらに行動すれば、債務者に気付かれて逃げられてしまいます。口頭弁論とか審尋とか必要だすると、債務者に逃げる(というか隠す)時間を与えるようなものです。

仮の地位を定める仮処分の場合、特に債務者にばれても不都合はないため、口頭弁論とか審尋の期日が必要となってます。


決定の理由について

  • 保全命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。但し、口頭弁論を経ないで決定する場合には理由の要旨で足りる(16)

これ初めて見る人にはよく分からないと思います。保全命令の申立てというのは、裁判所に対して仮処分命令などの「保全命令を発してください」という申立てのことです。

次に申立てについての決定ですが、裁判所が発する判決、決定、命令の3種類あるうちの決定のことです。(命令は裁判長から出されます。試験では要注意。因みに「保全命令」の命令は判決、決定、命令の命令ではありません。とてもややこしいです)つまり、裁判所が保全命令を発すると決めた(発しないと決めた)場合に理由がいると言ってます。

まとめてみますと、

口頭弁論あり:理由がいる

口頭弁論なし:理由の要旨でOK


保全異議と保全取消し

保全異議と保全取消しの違いですが、すごく簡単に言うと保全命令が出たときの状況に文句を言うのか、暫く経って状況が変わった後に文句を言うのかの違いです。今回は口頭弁論周辺についてなので、これくらいにしておきます。

  • 口頭弁論、又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定ができない(29)
  • 裁判所は、審理を終結する日を決定する。但し、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日においては、直ちに終結宣言できる(31)
  • 保全取消しでも同様に準用(40.1)

決定の理由の有無について

  • 16条本文の規定は、保全異議の申立てについての決定において準用する(32.4)
  • 16条本文の規定は、保全取消しの申立てについての決定において準用する(37.8, 38.3, 39.3)

口頭弁論を経ないで・・・以下は準用されていません。つまり理由が絶対いるということになります。

試験でのポイントとしては、下記3点くらいでしょうか。とにかく紛らわしいです。

  • 申立ての時は「債務者が立ち会う」という文言だったのが、異議・取消しの時は「当事者双方」に変わっている
  • 任意的口頭弁論がなくなった(密行性が不要になるため)
  • 決定には理由が必要